明治から昭和にかけて倉敷の文化と経済の発展に寄与した名家・大原家で代々使われてきたアップライトピアノを修復して地域活性化につなげようと、大原家の子孫らが取り組んでいる。
プロジェクトメンバーの大原碩人さん(右)と中澤拓也さん(左)
一橋大学を休学中の大原碩人さんと岡山大学在学中の中澤拓也さんが1月、「倉敷大原家のベヒシュタイン活用委員会」を立ち上げた。碩人さんは、倉敷紡績(クラボウ)経営や大原美術館設立などで知られる実業家・大原孫三郎はの玄孫(やしゃご)に当たる。
ピアノは、スタインウェイ、ベーゼンドルファーと並び世界三大ピアノブランドの一つとされるベヒシュタインで1928年製。入手の時期や経緯は不明だが、孫三郎が初孫のために購入した説もあるという。製造から90年以上たって部品の摩耗や外装の傷みが見られ、本来の性能を取り戻すためには分解修理が必要な状態にある。
碩人さんがプロジェクトを立ち上げたきっかけは、家族に誘われて聴いた倉敷教会でのピアノの演奏会。「クラシックになじみのない自分でも、ずっとそこに居続けたくなるほど感動し、音楽との偶然の出合いが人に与える力を強く感じた。そこで家のピアノのことを思い出し、『人と音楽が出合える場所づくり』に活用したいと考えた」と碩人さん。「音楽好きだけが集まる閉ざされた場ではなく、音楽に興味を持ってもらえるような開かれた場を作りたい。10~20年後を見据えて、倉敷全体が音楽にあふれる街にしていきたい」とも。
クラウドファンディングで修復資金を募ったところ、開始から9日で目標金額の200万円を達成した。中澤さんは「多くの人たちから支援を受け感謝している。皆さんの期待に応えるため、より強い気持ちを持って取り組んでいく」と話す。
修復したピアノは国の重文「語らい座 大原本邸」内に常設し、定期的に演奏会を開く予定。引き続き支援を募ってメンテナンスなどに活用する。クラウドファンディングの募集は3月15日まで。