マスキングテープ「mt」を製造するカモ井加工紙(倉敷市片島町、TEL 086-465-5812)で5月15日から、期間限定の工場見学会「mt factory tour」が行われている。
1923年(大正12年)の創業から、和紙と粘着剤を組み合わせたハエ取りテープ「カモ井のハイトリ紙」」や業務用マスキングテープを製造してきた同社。2008年に文具・雑貨向けマスキングテープ「mt」を発売して以来、工場見学を希望する愛用者の声が高まっていたという。来年の90周年に合わせ旧工場を改装した史料館を整備、今回初めて期間限定での一般公開に踏み切った。
先月、同社のホームページで応募を受け付たところ約5000人の申し込みがあった。見学者の多くは「mt」ファンの20代~40代の女性。地元からは親子連れや、工場見学好きの年配の姿も。遠方では北海道から、海外ではシンガポールや台湾からも訪れているという。
参加者は倉敷駅前の集合場所から、車体と内装が「mt」でデコレーションされた無料送迎バスに乗り、約20分で工場に到着。工場内では、天然ゴムやアクリルから粘着剤が作られる過程の説明を受けられるほか、粘着剤が塗布された長い和紙のロールを、通常のマスキングテープのサイズになるよう裁断、包装していくまでの工程を目の前で見学できる。
第三撹拌(かくはん)工場を改装した史料館は、2階建てで370平方メートル。大型攪拌機を設置していた名残である天井の穴をそのまま残しつつ、外側を全面ガラス張りにしたモダンなデザイン。展示されているのは「mt」でデコレーションした自動車や自転車、2010年まで80年間使われた「ハイトリ紙製造機」、これまでに発売された「mt」全パターンのサンプルなど。同社の歴史を詳細に知ることができる。
史料館隣の工場跡は、アーティスト浅井裕介さんが建物全体をキャンバスにマスキングテープで描いた作品「尻尾(しっぽ)の森」となっている。床に描かれたキツネ風の動物のしっぽが葉を生やしながら枝のように壁全体を伝い天井まで伸びていき、周りの花と共に森を形成する。見学者は建物内に用意されたマスキングテープで自由に壁を装飾し「森づくり」に参加できる。建物内の様子は期間中USTREAMでライブ配信されている。
ショップコーナーでは、子ども向けシリーズ「mt for kids」や、家具やインテリア向けのワイドサイズ・シリーズ「mt casa」などの新商品を使った展示と先行販売を行うほか、「Liberty」「Paora Navone」などの限定テープの販売、自由に好みの幅を指定できる「はかり売り」なども行う。
見学者全員には記念品をプレゼント。マスキングテープが入ったガチャポン(1回100円)では、当たりが出ると追加で非売品のマスキングテープも進呈する。
壁にマスキングテープを自由に貼れる建物も用意。見学には時間制限を設けていないため、デコレーションに没頭する若い女性や親子連れの姿が多く見られた。
「『来てよかった』という反応が多く、手応えを感じている」と同社広報・企画担当の高塚新さん。「見学を通じてメード・イン・ジャパンの品質、ものづくりへのこだわりを感じとってほしい」とも。期間限定ということもあり、今回参加できなかった人もいたが、「現時点では未定だが、要望にはできるだけ応えていきたい」と次回の見学会開催も前向きに検討している。