倉敷・下津井の「吹上美術館」(倉敷市下津井吹上1、TEL 050-6865-2539)にほど近い古民家で現在、彫刻家・井浦千砂さんの滞在制作を公開している。
井浦さんは神奈川県生まれで、東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了。「安宅賞」(2007年)、「富嶽ビエンナーレ展 佳作入賞」(2011年)などの受賞経験を持ち、東京、大阪、京都などで個展やグループ展を行ってきた。2014年には岡山在住の美術作家・高橋秀さんとコラージュ作家・藤田桜さん夫妻が設立した「秀桜基金 留学賞」を受賞し、約半年間、イタリアとインドに滞在した。
「秀桜基金 留学賞」をきっかけに岡山でさまざまな縁が生まれ、来年1月に瀬戸内市立美術館での展示も決まった井浦さん。「せっかくだから岡山で暮らしてみたい」という希望を持ち掛けたところ、美術関係者を通じて吹上美術館とのつながりが生まれ、同館にほど近い築100年の古民家での滞在制作が決まった。8月に入居し、母屋の2階で絵画、納屋で木彫(もくちょう)の制作を行っている。
古民家での生活については、「畳で寝て、天窓の光やツタの花の色の変化を楽しみ、瀬戸内海の新鮮な魚を食べながら気持ちよく生活している。イタリアでもそうだったが、気持ちよく暮らしていると、それが作品にも表れてくる」と充実した様子。制作公開では、和室、押し入れ、床の間、キッチン、縁側、納屋など、それぞれの空間の特徴に合わせて絵画と木彫の新作と旧作約50点を展示する。
今回の滞在で井浦さんが描いている絵画は、キャンバス全体をほぼ単色で塗りつぶしたもので、作品ごとに異なる色を使う。「ベタ塗りで形象は描いていないが、感情は描いている。一見、簡単そうに見えるが、何となく塗っているのではなく、同じ黄色を塗っても同じものにはならない。情熱、エネルギー、崇高さ、切なさ、優しさ、美しさ、気持ち良さなど、生きることの素晴らしさを表現している」と井浦さん。「作品は販売もしているので、好きな作品、好きな色があれば、キッチン、寝室、子ども部屋など、暮らしの中に取り入れていただければ」とも。
開館時間は10時~17時。土曜・日曜のみ開館。入館料は500円、小学生以下無料。制作公開時間は11時~16時で、土曜のみ公開。入館者に古民家への地図を配布する。来年3月まで。