倉敷・美観地区の大原家旧別邸・有隣荘(ゆうりんそう、倉敷市中央1、TEL 086-422-0005)で現在、「宮永愛子 みちかけの透き間」展が開かれている。主催は大原美術館。
有隣荘は、大原美術館を創設した大原孫三郎が1928(昭和3)年に建設した別宅。普段は非公開だが、春と秋に期間限定で一般公開し、同館の特別展示を行っている。今回は、現代美術家・宮永愛子さんが作品7点を展示。有隣荘が積み重ねてきた時間の流れに思いをはせた空間演出を行うという。
京都生まれの宮永さんは京都造形芸術大学美術学部彫刻コースを卒業後、1年間イギリスに滞在し、東京芸術大学大学院美術学部先端芸術表現専攻を修了。常温で昇華する性質を持つ「ナフタレン」を素材として使い、時間経過とともに変化していく作品を作ることで知られる。
洋間には、有隣荘創建当初に作られたイスをナフタリンでかたどり、空気とともに樹脂で封じ込めた大作「みちかけの透き間 -waiting for awakening-」を展示。作品の後ろには封印された小さな空気穴があり、封印を解くことで空気と反応し、「眠っていた作品が目覚める」仕掛けになっている。特別な釉薬によって貫入(=ひび割れ)の音が断続的に鳴り続けるように仕上げられた陶器のサウンドインスタレーションや、有隣荘の庭にあるモチノキの葉脈を地図に見立ててつなぎ合わせた作品なども。
作品制作では、「変わりながらも存在し続ける世界」を表現に取り入れているという宮永さん。「『はかなさ』と表現されることもあるが、『弱さ』ではなく『変化する柔軟さ』と捉えている」と話す。
「通常のギャラリーと異なり、有隣荘には人が暮らしてきた歴史があるので時間が宿っている。この場所でどのような生活をしていたのかを想像しながら展示に臨んだ。作品を見てもらいたい、というよりは、この場所に耳を澄ましてもらえれば」とも。
開催時間は10時~16時30分。料金は、一般=1,000円、小~大学生=500円。10月22日まで。