造形作家の川埜龍三さん(笠岡市)が制作した巨大なイヌの像が5月18日、工房近くの埠頭(ふとう)から設置場所の犬島(岡山市東区)へ向け2泊3日の「お散歩」に出発。19日には倉敷児島地区の海岸にもその姿を現し、地元住民らを楽しませた。
「イヌのお散歩」は、川埜さんが個人で取り組んでいる「犬島ハウスプロジェクト」の一環。犬島にある、おかやま山陽高校所有の「海の家」を犬小屋に見立て、巨大なイヌの像(奥行き5.1メートル×高さ3メートル×幅2.4メートル)を恒久設置するもの。同校の原田三代治学園長が2011年、「未来の子どもたちに希望を与えられるようなものを作ってほしい」と川埜さんに依頼して始まった。
イヌを載せた船は、集まった200人の地元住民らに見送られ笠岡の埠頭を出航。白石島では地元の中学生たちがカヤックで出迎え、海上で合流。島民ら50人が見守る海岸まで並走した。19日は瀬戸大橋をくぐり、児島地区沿岸をゆっくりと「お散歩」。あいにくの雨だったが、渋川海水浴場には20人の周辺住民が出迎え、イヌに向かって「ワ~ン!」と呼び掛けた。
「お散歩」を終えたイヌは、内外に1センチ厚の特殊なセメントを吹き付けるなど、恒久設置のための処理を施される。7月下旬からは、川埜さんが「イヌの毛」となる6000~1万枚の陶板タイルを貼り付け、10月に完成させる。陶板タイルは、1000人以上の一般参加者が自由に絵や文字を彫り込んで制作したもの。「みんなの作ったタイルは希望に満ちている。完成時にどうなるのかまったく予想がつかないが、関わってくれた人たちの魂やエネルギーが詰まったイヌになることだけは確実」と川埜さん。
「これまでの11年間、いつも一人で制作してきたが、こんなに多くの人と関わりながら作品を作ったのは初めて。白石島に着いた時は、タイル作りに参加してくれた子どもたちも笑顔で迎えてくれて感動した。こういう展覧会もあるんだな、と感じた」と目を輝かせていた。