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倉敷・真備の南山城跡、発掘調査終了 水害防止工事で山ごと消滅へ

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 倉敷市船穂町柳井原・真備町川辺の境に位置する「南山城(みなみやまじょう)跡」が10月末に発掘調査を終え、国土交通省が進める「小田川合流点付け替え事業」により間もなく姿を消す。

発掘調査時の南山城跡の様子

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 同城跡は、戦国時代(16世紀)に築かれた山城で、小田川と柳井原貯水池に挟まれた標高約67メートルの小高い山に位置する。曲輪(くるわ)、腰曲輪(こしぐるわ)と呼ばれる造成した平坦地には、虎口(こぐち=出入り口)土塁(どるい=防御用に土を盛ったもの)、横矢(よこや=敵を正面と側面から攻撃するために土塁や堀を屈曲させた構造)などを設ける。

 岡山県古代吉備文化財センターが2017(平成29)年4月から今年10月まで2年7カ月に及ぶ発掘調査を行った結果、城の規模、構造、建築技術などが明らかになった。鍋、すり鉢などの生活用品、小柄や鉄砲玉などの武器、天目茶わんやすずりなどの高級品も出土した。城内からは居住、物資の備蓄、見張り台などに使われていたと見られる掘立柱建物(ほったてばしらたてもの)が複数見つかったほか、堀切(ほりきり)、竪堀(たてぼり)、横堀(よこぼり)、畝状竪堀群(うねじょうたてぼりぐん)など、地形を生かして作ったさまざまな堀の実態が明らかにになった。

 「土器の量から考えると、実際に住んでいた人数は少なく、使われていた期間も比較的短い。戦(いくさ)で敵に向かって投げる石も残っており、ここで戦があった痕跡はない」と同センターの米田克彦さん。

 小田川合流点付け替え事業では、高梁川の水が小田川に流れ込む「バックウォーター現象」による水位上昇を軽減するために、小田川と高梁川の合流地点を約4.6キロ下流に切り替える。同城跡のある山は小田川の新しいルートのために、丸ごと掘削されて消滅する。

 米田さんは「実物は今回の工事でなくなってしまうが、できるだけのことを発掘調査で解明し、出土品を保存し、記録として残していく。今後も研究は続いていく」と話す。

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