瀬戸大橋の麓にある「鷲羽山下電ホテル」(倉敷市大畠、TEL 086-479-7111)が現在、1990年に廃線となった下津井電鉄線の車両を移設してカフェにリノベーションすることを目指し、クラウドファンディングサイトで資金を募っている。
下津井電鉄線は、かつて茶屋町駅~下津井駅間(15駅、21キロ)を運行していた。「ナローゲージ(軽便鉄道)」と呼ばれる線路幅の狭い鉄道で、小ぶりな車両が特徴。一部の車両は旧下津井駅の車庫に保存されており、市民有志らが結成した「下津井みなと電車保存会」が、下津井電鉄の協力の下、車体の補修や清掃を行っている。
同ホテルの計画は、客車(クハ24)と貨車(ホカフ9)を旧下津井駅から同ホテル駐車場までの約3.2キロを運搬移設し、車両の内外装を復元した後、カフェやイベントスペースとして活用するもの。運搬移設は今年春から夏にかけて予定する。
同ホテルの永山久徳社長は「ホテル名に『下電』の名を冠しているため、お客さまから思い出話を聞いたり『今はどうなっているのか』と聞かれたりすることも多かった」と話す。「かつてこの地域に電車が走っていたことを知ってほしい、思い出してほしい、忘れないでほしい、という気持ちで今回のプロジェクトを立ち上げた。車両を保存するだけでなく、記憶をつないでいきたい」と力を込める。
クラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」では3月17日現在、101人が支援し、目標金額438万7,996円のほぼ半分に当たる216万5,000円が集まっている。「クラウドファンディングという手法を使ったのは、資金を集めることよりも、どれぐらい下津井電鉄のファンがいて、期待してくれている人がいるのかを知りたかったから。応援してくれる人たちとつながりたかった」と永山社長。「子どものころに乗車した時の思い出をコメントしてくれる支援者もいて反響の大きさに驚くとともに、広く愛されていることを再認識した」と話す。
移設後は、車両の復元のほか、枕木・レール敷設、デッキ・屋根の設置などの造成を行い、同ホテル創業90周年に当たる2020年のオープンを目指す。「息の長いプロジェクトになるが、車両の復元についても皆さんと知恵を出し合いながら進めていきたい。お茶を飲みながら思い出話に花を咲かせることができるような、くつろげる空間にしたい」と意欲を見せる。
クラウドファンディングの募集は3月29日まで。