倉敷の「吹上(ふきあげ)美術館」(倉敷市下津井吹上1、TEL 090-3634-3163)で現在、特別展「高本敦基展 -並置思考-」が開かれている。
高本さんは広島県生まれ。金沢美術工芸大学卒業後に渡仏し、ナンシー国立高等美術大学大学院を修了した。2009年から制作拠点を岡山県勝山に置き、2014年には「第17回岡本太郎現代芸術大賞 特別賞」と「第15回岡山芸術文化賞 グランプリ」を受賞している。
同展では、3点の作品を2つの展示スペースを使って展示し、空間全体を演出する。「Sketch on Concrete Block」は、雨上がりの水たまりの形を正確に記録し、その形をコンクリートブロックに刻みこんで再現したもの。規格に沿って複製されたものに、一度きりしかできない形を刻み込むことで、同じ物で囲まれた世界へ疑問を投げかける意欲作となっている。
「モールハウスプロジェクト」は、菓子のパッケージを結ぶ時などに使うモールを組み合わせて作った小さな家を無数に組み合わせて床や壁を覆うほどのオブジェに仕上げたもの。「6年前、失業して生活に不安を感じていた時に、身の回りにある素材を使って等身大でできることを模索していた時に始めた」と高本さん。
「The Fall」は、無数の洗濯バサミを組み合わせて作った放射状の巨大な円のオブジェで、中心部は塔のように直立して天井まで伸びている。「現代人の生活を落下する滝とバベルの塔に見立てた。この垂直性によって人間の根源的なもの、神聖なものを再現した。小さいものが組み合わさって生まれる強さは、人間ともリンクする」と話す。
開館時間は10時~17時。土曜・日曜のみ開館。入館料は500円、小学生以下無料。10月25日まで。