倉敷・美観地区の大原家旧別邸「有隣荘(ゆうりんそう)」(倉敷市中央1、TEL 086-422-0005)で現在、企画展「下道基行 漂泊之碑」が開かれている。主催は大原美術館。
有隣荘は、後に大原美術館を設立する実業家・大原孫三郎の別邸として1928(昭和3)年に建てられた。通常は非公開だが、毎年春と秋に期間限定で一般公開し、美術展示を行っている。
下道基行さんは岡山出身の美術家。武蔵野美術大学造形学部油絵科を卒業後、本年度の「ヴェネチア・ビエンナーレ」では日本館代表作家の一人として参加している。同展では、2014(平成26)年から沖縄に足を運びながら取り組んでいるプロジェクト「漂泊之碑」を新作とともに公開する。
1階洋室では、沖縄の浜辺に流れ着いた国内外のガラス瓶を集め、琉球ガラスの職人と新しいガラスを作り出すプロジェクト「沖縄ガラス」を展示。1階和室では、宮古・八重島諸島に点在する、津波によって浜辺や陸地に流れ着いたさまざまな岩をモノクロ動画で記録した映像作品「津波石」を展示する。
2階和室には、浜辺に流れ着いたガラス瓶を砕いて板ガラスを制作する新プロジェクト「渚三彩」を展示。漂着するガラスは、中国の白酒などが透明色、韓国の焼酎などが緑色、台湾の養命酒などが赤茶色と、主に3色ある。これらを完全に混ぜ合わせず、それぞれの色が出るように板ガラスを制作し、有隣荘の窓にはめ込んだ状態で展示する。
「内側と外側の関係性や境界線について興味がある。浜辺は海と陸の境目であり、沖縄は日本、中国、アメリカの影響を受けており境目とも言える。作品で混ぜ合わせたガラス瓶も日本、中国、韓国の物。移動して混ざり合うが、完全に同化するのではなく元の形も残っている状態というのは、ガラスだけでなく文化でも言える。周辺の人や国とどう付き合っていくのか、という問いにもつながる」と下道さん。
開催時間は10時~16時30分。入場料は、一般=1,000円、小学生~大学生=500円。11月4日まで。